糖質の正しい理解が、パフォーマンスと健康を変える
「糖質は太る」
「糖質制限が健康にいい」
そんな声がある一方で、実際には糖質が体を動かす主なエネルギー源であることは間違いありません。とくに筋トレや運動をしている人にとって、糖質の理解はパフォーマンスを大きく左右します。
この記事では、糖質の種類や代謝経路、果糖との違い、そして避けるべき糖質の種類まで、科学的な根拠をもとにわかりやすく解説していきます。
糖質は体のガソリン
糖質の貯蔵量は意外と少ない
体脂肪は数kg単位で蓄えられますが、糖質はその10分の1以下。主に次の3カ所に保存されます。
- 肝臓のグリコーゲン:約100g
- 筋肉のグリコーゲン:約300g
- 血液中のグルコース:約20g
このように貯蔵量が限られているため、日々の食事で補給する必要があります。
糖質が重要な2つの理由
糖質は主に2つの理由で不可欠です。
- 1つ目は、糖質がエネルギー(ATP)を作るための材料になります。脂質よりも早く使われるため、瞬発的な動きや高強度トレーニングでは特に重要です。
- 2つ目は、筋肉の分解を防ぐためです。糖質が不足すると、体は筋肉を分解してアミノ酸から糖を作る「糖新生」を行います。結果、筋肉量が減って基礎代謝も低下してしまうのです。
炭水化物と糖質の違い
「糖質=炭水化物」は間違い
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」の総称です。糖質はエネルギー源になりますが、食物繊維は基本的に消化されず、エネルギーにはなりません。
また、一般的に糖質1g=4kcalとされていますが、実際に体内で使われるエネルギーは平均3.8kcal前後。これは消化吸収効率の差によるもので、栄養学的にはより正確な知識が求められます。
糖の種類とその分解
単糖類・二糖類・多糖類の違い
糖は構造により以下の3つに分類されます。
- 単糖類(例:ブドウ糖、果糖、ガラクトース)
- 二糖類(例:砂糖、麦芽糖、乳糖)
- 多糖類(例:デンプン、マルトデキストリン、グリコーゲン)
最終的には、消化酵素によってブドウ糖などの単糖に分解され、体内でエネルギー源として使われます。
ブドウ糖はどう使われる?
ブドウ糖が体内に入ると血糖値が上昇し、それに応じて膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンはブドウ糖を細胞内に取り込み、以下の流れでエネルギーへと変換します。
- 解糖系 → ピルビン酸に変換
- クエン酸回路 → 電子伝達系へ
- ATP(エネルギー)を生成
この代謝には、ビタミンB群(特にB1・B2・ナイアシン・パントテン酸)やミネラル(鉄、マグネシウムなど)が必須です。
ビタミンB群が足りないとどうなる?
糖をエネルギーに変換する「代謝酵素」は体内で作られますが、その働きには「補酵素」が必要です。補酵素とは、代謝を助ける栄養素であり、主にビタミンB群やミネラルが該当します。
特にビタミンB群は活性型に変換されないと効果を発揮しません。その変換には鉄や亜鉛、マグネシウムなどのミネラルが必要です。
つまり、糖を効率よく使いたいなら、ビタミンB群とミネラルを一緒に摂ることが不可欠なのです。

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果糖(フルクトース)の代謝は注意が必要
果糖は小腸で代謝される?
これまで果糖は肝臓で代謝されると言われてきましたが、近年の研究では「小腸で90%以上代謝される」ことが明らかになっています。
これは「ケトヘキソキナーゼ」という酵素が小腸に存在するためで、ここで代謝された後に肝臓へ運ばれます。
果糖が引き起こす副作用とは?
果糖の代謝で問題になるのは、副産物です。
- 乳酸(過剰に産生されやすい)
- 脂肪酸(脂肪肝や内臓脂肪の原因)
- コレステロール(高脂血症リスク)
- 活性酸素とAGEs(終末糖化産物)
とくにAGEsは老化や糖尿病合併症の要因となる物質。中でも「グリセロアルデヒド型AGEs」は強い毒性を持つことがわかっています。
果糖ブドウ糖液糖には要注意!
清涼飲料水やお菓子、加工食品に含まれる「果糖ブドウ糖液糖」は、トウモロコシ由来のブドウ糖を人工的に果糖化したもの。ビタミンやミネラルが一切含まれておらず、代謝の過程で強い酸化ストレスを引き起こします。
日本人は平均で年間6.4kgも摂取していると言われており、コンビニやスーパーの商品ラベルを見て、「果糖ブドウ糖液糖」が入っていないかを確認する習慣が大切です。
フルーツは悪ではない
フルーツには果糖が含まれますが、同時にブドウ糖や食物繊維、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどの有用成分も豊富です。
たとえばバナナの糖は果糖とブドウ糖が半々。さくらんぼのように果糖比率が高い果物もありますが、極端に避ける必要はありません。
問題なのは「単離された糖(液糖など)」であって、自然な食品としてのフルーツはバランスの取れた栄養源です。
糖質制限のリスクと誤解
ケトジェニックダイエットのように極端に糖質を制限すると、以下のような問題が起こる可能性があります。
- 脳:基礎代謝のうち約20%は脳が消費(糖が主燃料)
- 神経組織や水晶体:糖しか使えない部位もある
- 長期的には神経障害、白内障、腎不全のリスクも
糖質は「完全にカットすべき」ものではなく、「量と質を調整すべき」栄養素です。
糖質は悪者ではない。使い方次第
糖質は、私たちの体と脳を動かす重要な燃料です。特に運動をする人、集中力を高めたい人、健康を維持したい人にとって、糖質の「質」と「摂取のバランス」を見直すことがパフォーマンスの鍵を握ります。
避けるべきは「果糖ブドウ糖液糖」などの精製糖であり、フルーツや全粒穀物などから得られる糖質は、むしろ積極的に取り入れる価値があります。
あなたの体が本当に必要としているのは、「正しい知識と選択」かもしれません。